10、中皇命徃于紀温泉之時御歌
君之齒母吾代毛所知哉磐代乃岡之草根乎去来結手名
従来訓
中皇命の紀の温泉に徃(いま)せる時の御歌
10、君が代も我が代も知らむ磐代(いはしろ)の岡の草根をいざ結びてな
真の歌意
仲違いして歯向かうから、潰されるのです。やたらあちこち動き回って、変なことをすると叩かれますよと、いつも私が言ってたでしょ?いったいどうやってこの問題を解決するつもりなの?伽耶の人は、今何人残っていると思う?
父孝徳天皇の恨みを晴らそうと、憤懣やる方なく焦っていた青年を、いつもなだめていた間人皇后。憤懣を逆に利用されて、罪に問われた有間皇子を前に、途方に暮れていた間人皇后。その表情までありありと見える歌である。
中皇命つまり中大兄の双子の妹間人皇女は、やはり「天皇」であったようだ。間人皇女は斉明の死後、大海人に擁立され中皇命として即位した、という説はこの歌からも裏付けられる。中大兄は絶世の美女間人との近親相姦を長く断つことができず、その不倫が世間の非難を浴びて、結局正式に天皇位につけなかった。一時は孝徳天皇の皇后として嫁がせたが、孝徳失脚後またぞろ手元に呼び寄せて世間の顰蹙を買った。そしてついに間人を殺害し、正式に即位しようとした寸前、中大兄は大海人に暗殺された。