絵ピソード

その89

    小西美術工芸社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏。元ゴールドマンサックス金融調査室長。オックスフォード大学日本学科卒業。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集めました。2019年9月19日発行の『国運の分岐点』を、今読んでいます。本の抜粋を以下に述べます。

 「これは、日本の新しいグランドデザインを考えていく本です。日本という国がどのような道に進むのか。そしてどのような社会を目指していくのか。これからの日本の方向性を明確にし、政策、制度、そして物事の考え方など、読者の皆さんと一緒に、国家の全体像というものを描いていきたいと思います。、、、、今の日本は、これまで経験したことがないような大きな変化に直面しています。“人口減少”です。、、、2060年までに、2015年と比較して、生産年齢人口が3264万人減少します。、、、国一つが消滅してしまう程の規模の“人口減少″が、すでに始まっているのです。、、、日本の歴史を見ると、これまでグランドデザインを大きく変えるような激しい新陳代謝が幾度となく繰り返されてきました。では翻って今の日本はどうでしょう。これまでなかった人口減少という劇的な変化に見舞われています。しかし、今の日本政府は、新しいグランドデザインを描くことがまだ出来ていません。、、1945年から始まった旧グランドデザインが、いかに制度疲労を起こしているかを検討して、新しい日本は何を目指すべきかというグランドデザインの骨子までを考えていきます。、、古い価値観との決別は過去にも起きており、その都度社会の混乱や衝突を招いてきました。、、、そのような意味では人口減少社会のグランドデザインについてもなかなか受け入れられない、という人が多くいるのも当然です。しかし、それでもやらなければいけないと私が考えるのは、それこそが未来に繋がっているからです。時代の大きな変化に逆らって不幸になる人を少しでも減らし、日本社会を少しでも良い方向へと近づけることができるからです。本書を世に出そうと考えたのは、それが最大の理由です。」

その90

   デービット・アトキンソン氏の著作『国運の分岐点』からの抜粋を続けます。
「、、、私はこれまで30年以上、経済分析の世界で生きてきました。徹底的に分析を重ねていくうち、つくづく痛感するのは、複雑な事象であればあるほど極めてシンプルな原因に帰着するということです。日本の生産性の低さという問題も、実はこの典型的なケースです。複雑さを招いている一つのシンプルな原因、それは中小企業なのです。日本経済の問題が中小企業分野に集中しています。、、、
 日本は成長の体験があまりにも長いので、改善は得意でも、改革は苦手です。厳しく言えば全く出来ていないと言っても過言ではありません。構造改革には、現状を客観的かつ冷静に分析する能力が必要不可欠です。残念ながら今の日本は、その能力が乏しいと言わざるを得ません。日本では分析能力が重視されていません。教育の場でも分析ということを体系的に教えてもいないのです。しかし、これから日本が初めて直面する人口減少という大きな試練に、事後対応や問題の先送りで臨むと取り返しのつかないことになります。国力は大きく損なわれ、日本が致命的ダメージを負うのは間違いありません。、、、
 衝撃の大きさを考えれば、日本社会が直面する人口減少は、後世の日本史、いや世界史にも記録されるであろうたいへんなインパクトのある国家の変化です。だからこそ歴史に残るグランドデザインが今、求められているのです。、、、日本のこれからを見据えてデフレや低成長という罠から抜け出すためには生産性の向上、つまりは賃金の引き上げが必要不可欠です。そのためには、生産性を低くしている小規模の会社を整理統合して、企業規模を拡大していくしかありません。、、、中小企業に対する特別な思い込み、中小企業神話を見直して、客観的かつ冷静に、中小企業というものが日本経済にどのような影響を及ぼしてきたのか、そして賃金の引き上げを阻んできたのかという、構造的な問題を直視しなければいけません。、、、経済政策も、社会保障政策も、すべては中小企業を守るという考えからスタートしているので、どの政策もうまくいかないのです。当然です。いつも初めにボタンを掛け違えているので、どの政策もうまくいきません。この30年、日本は正しくシャツを着ることができず、ここまできてしまいました。、、、人口減少が急速に進む中で、社会保障システムの破綻はもはやカウントダウンに入っています。政府としても、どんな政策を進めても機能しない原因に、賃金の低さ、すなわち大企業と中堅企業が少なくて中小企業が多すぎるという問題があることに気づきつつあります。中小企業は日本の宝と持ち上げるのをやめて、伸びる企業が日本の宝という考え方に頭を切り替えなければいけません、社会保障とインフラ整備に莫大なお金がかかるということと、人口減少による経済の縮小という、日本が抱える二つの社会課題が、首都直下地震と南海トラフ地震によって、一気に深刻化していく恐れがあるのです。しかもこうしている今すぐに、これらの大災害が発生しても何ら不思議はないのです。一刻も早く、日本経済に様々な問題を引き起こしている中小企業にメスを入れるしかもはや道はありません。最低賃金の引き上げは、そのための唯一にして最高の手段なのです。変化を期待して待っているだけではもはや絶望的です。世界に冠たる地震大国がGDPに対する借金を世界一の規模で膨らませている、この恐ろしい現実を直視しすぐ動かなければなりません。、、、」

その91

 日本語は曖昧な言語です。論理や分析に全く向いていません。何しろ主語がなくても、いや主語がないことで成立する言葉ですから。「口は禍のもと」「言わぬが花」「もの言えば唇寒し秋の風」「沈黙は金」「以心伝心」「口説の徒」「空気を読め」、、「初めに言葉ありき」という西洋キリスト教社会とは真逆の、言葉を軽視、危険視することわざばかりです。
 「失われた10年」が、20年になり、30年になっても、誰も動かず、座して死を待つのみという今日の日本の体たらくはイギリス人のアトキンソン氏には全く理解できないことでしょう。だいたい「失われた」とはよく言ったもの。「失なった」という自覚がなければ、なぜ失ったのか、何が原因なのか、どうすればいいのかという分析には結びつきません。まるで津波でたくさんの命が「失われた」という自然現象と同じとらえかたをしているのですから、対策は津波てんでんこ、とにかく自己責任で逃げよというしかありません。したがって、現在日本経済の諸悪の根源である「低賃金」も自己責任で耐えよ、ということにしかならないのです。
 「働き方改革」という言葉もよく考えればおかしい言葉です。働くのは労働者、普通の国民です。その働き方を改革するということは、労働者の働き方が悪いから改革せよということになります。これまた政府お得意の責任転嫁です。日本の労働者は効率悪く長時間働いている。土曜日、日曜日も際限なく働いて、過労死などを引き起こしている、けしからん!職場に鍵をかけるから午後6時になったら、速かに退勤しろ!
 誰が好き好んで長時間労働をしていると?低賃金だから長時間労働をせざるを得ないという問題の核心を見ないで国民に犠牲を強いる態度は戦前と何ら変わっていません。太平洋戦争で310万人の国民を殺しておいて責任を取ろうとしない日本の支配者の無責任ぶりは今も変わっていません。自国の国民に対してさえきちんと対処しないのですから、かつて植民地として支配した隣国への配慮などできるわけがありません。
 

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