76 孤独を癒すのは文化

2022年08月29日 22:10

愛のモヤモヤ相談室

 美輪明宏さんは87歳にしてNHKのEテレに冠番組を持っています。最初は単発そして不定期から今では月一度のレギュラー番組になっています。8月の番組で、孤独に悩む相談者がピアノが好きだったが習わせてもらえなかった、と言ってショパンの別れの曲のワンフレーズを口ずさみました。すると美輪明宏さんが「人間の孤独を癒すのは文化」と言い切ります。ショパンの別れの曲が好きということは文化に接していること。文化愛好者は孤独ではないと相談者を優しく諭しました。

 なるほどそうなんだ。人間が各種文化に入れ込むのは孤独を癒すためなんだ。人間は唯一大脳皮質を持っている生き物で、思考する生き物です。したがって大なり小なりくよくよと己の孤独感に苦しんでしまう。だから太古の昔から人間は文化芸術活動に入れ込むということなんだ。

 2022年8月25日、東京オペラシティのタケミツ記念ホールで、チョ・ソンジンのピアノコンサートが開催されました。今回の来日では、愛知県名古屋市と神奈川県横須賀市の2カ所でコンサートが開かれる予定でした。しかしチケットが取れないファンが続出し、急遽横須賀公演の2日前の8月25日東京のコンサートが追加されチケットが売り出されました。東京公演のチケットを手に入れ待望のコンサートに駆け付けましたが、チョ・ソンジンのコンサートを聞くのは4年半ぶり2回め。

 2018年、1月28日横浜みなとみらいホールで24才のチョ・ソンジンは完成度の高い演奏で聴衆を沸かせました。2015年のショパンコンクールに21才で優勝したチョ・ソンジンについて、Yahoo知恵袋で「チョ・ソンジンは他のピアニストと何が違うの」という質問に対して、「ショパンコンクールの本選のピアノ協奏曲の演奏において、一発目の和音の抜けの良さや華やかさが他の人と全然違ってました。この一発で決まりです。一発目で決められるかどうかというのは、かなり重要なことだと思います。」というベストアンサーがありました。2022年8月25日のコンサートもまさにこれでした。ヘンデルのクラブサン組曲第1集から第2番へ長調HWV427の弾き始め第1音の華麗さと深みに魅了され、もう舞台上のチョ・ソンジンから目が離せません。4年ぶりのチョ・ソンジンは驚きの進化を遂げていました。ヘンデル、ブラームスの第一部、30分の休憩を挟んでシューマンの第2部へとプログラムは進み9時近くに終わりました。そしていよいよアンコールです。

 チョ・ソンジンがアンコールで弾いたのはなんとショパンのスケルツォ1番から4番まで。最後はほぼ総立ちの観衆に人差し指を立ててもう一回ですよとジェスチャーし、英語で短いスピーチ。for you というフレーズだけが聞き取れました。そして弾き終わると万雷の拍手に答えてお茶目に泣き真似をしてソンジン自身の感動も伝えてくれました。全てが終わったのは9時半、実に2時間半にわたるコンサート、「人間の孤独を癒し感動を与えて生きる力をくれるものは文化」を実感した一夜でした。

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