2022年1月29日土曜日。コロナ第6波オミクロン株の勢いが止まることを知らず、世界中で猛威をふるっています。昨日の日本国内感染者は8万人を超えました。これで4日連続で最多更新です。幸い重症者、死者の数共にデルタ株に比べてかなり少ないというものの、自宅療養者が26万人にのぼっており、対応は風邪並みとなっています。ある学者は、もはやコロナは風邪とみなすべきだ。すなわち感染症法の2類相当ではなく5類相当とするべきと主張していますが、5類に変更するまでもなく対応は既に5類相当になっていると言えるでしょう。しかし3月にはデルタ株の強毒化したコロナが第7波を起こすと警告している向きもあり、コロナを風邪と見るのは無理があるのではないでしょうか。風邪のようなオミクロンといえども基礎疾患のある高齢者は重症化しやすいことに違いはなく、死亡者も増えています。やはり基本的には巣篭もり生活に徹するしかなく、その時巣篭もり生活を快適化してくれるのがYouTubeです。孫がYouTubeを好んで見ているのが不思議でしたが今や孫の上をいくYouTube大好き人間になってしまいました。
YouTubeで今よく見るのはかつての2チャンネルの管理人西村博之さんです。46歳で今はパリに住み、英語圏最大の掲示板4チャンネルを管理しているひろゆきは論破王と言われ、日本の著名人の常識や日本人の現状をことごとくバカ、無能となで斬りにしているのに、顰蹙を買うどころか人気を博しています。訴えられたこと数しれず、警察にガサ入れされまくりというひろゆきの鋭い舌鋒は的をついているので、同調圧力に押しつぶされて言いたいことも言えない日本の庶民たる私たちの溜飲をスカッと下げてくれるのです。
そしてこの頃ひろゆきと一緒に、あるいは単独で、あるいはひろゆき以外の固定メンバーで、あるいは種々のシンポジウムなどでYouTubeに頻繁に出てくるのが成田悠輔さん、36歳です。ゆうすけは睡眠障害で、朝起きて学校に行くという普通の生活ができず、不登校の末東大に入学、そこでも大学には行かずに、しかし優秀な論文を書いて大内兵衛賞を受賞し、首席で卒業した天才で、現在はイェール大学助教授。専門はデータ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。ZOZOやメルカリなどとタイアップして仕事をしているという最先端の人です。日本はデジタル分野でアメリカなどの先進国に比べてざっくり30年は遅れていると嘆き、日本オワコン説を説き、日本はアメリカに追いつき追い越すなどという陳腐な目標を掲げるべきではなく、再鎖国して世界と隔絶した独自の発酵と珍味の我が道をいくべきだと、ひろゆきと遜色ない痛烈なことを言うのですが、ユーモアを交えたソフトな語り口とバリトンのいい声でおっしゃるので抵抗なく頭に入ってきます。
ひろゆきとゆうすけの罵詈雑言のおかげで目から鱗が落ちました。日本の現在の体たらくはIT革命に乗り遅れたことでデジタル化に30年の遅れをとっているということだったんだ、と。
日本は黒船の脅威により太平の眠りから覚め鎖国を解いた明治維新の時は、かろうじて産業革命を成し遂げ、欧米列強と肩を並べて近代化することができました。そのせいで欧米に憎まれ第二次世界大戦に完膚なきまでに敗北した後も、産業資本主義の花形であるものづくりに天性の能力を発揮し、GDP世界2位まで上り詰めました。しかし第4次産業革命と言われるIT化には日本は全然対応できませんでした。
日米貿易摩擦の末、1985年のプラザ合意で円高に合意させられた中曽根内閣。後から思えばこれが第二の日米戦争と日本の敗北でした。NOと言えない日本。竹下内閣の1989年1月、元号が平成に変わり、平成元年12月海部内閣の時、株価が市場最高値をつけました。しかし明けて1990年初頭、株価地価が急落しバブル経済が破綻しました。「失われた30年」の始まりです。政権交代が国民に一縷の望みを抱かせましたが、何と犬猿の仲であった自民党と社会党が手を組むという国民もあっと驚く茶番劇が起こります。そして1995年社会党党首の村山内閣の時、円高は脅威の1ドル=79円まで進みました。もちろん実力の伴わない円高です。アメリカの日本追い落としが成功しました。
バブル崩壊に縮み上がった日本企業はなすすべなく萎縮し、世界のデジタル化の潮流から目を背け、イノベーションを起こせず内部留保を積み上げて保身に走ります。郵便局に預金された日本国民の資産400兆円に狙いをつけたアメリカがまたぞろ弱った日本を餌食にすべく、自民党の一匹狼小泉純一郎(2001年から2006年まで総理大臣)に目をつけます。当時小泉内閣の経済産業大臣だった竹中平蔵は、とっくの昔に英米で失敗済みの、強欲資本主義と超格差社会を作り上げただけだった新自由主義経済政策を推進し、命の綱の水道でさえ業務の大半を民間に委託できるように法律を変えました。小泉純一郎は郵政民営化を叫び、自民党をぶっ壊すと言いながら国民生活を木っ端微塵にぶっ壊します。以後行政事務のアウトソーシングが当たり前になり電通やパソナのような民間業者が中抜きでボロ儲けをする税金の無駄遣いがあらゆる場所で繰り広げられるようになったことは、このコロナ禍で誰の目にも明らかになりました。2013年4月、アメリカワシントンにある戦略問題研究所というシンクタンクの席で、日本の水道をバーゲンセールしますと言い切った麻生太郎も2008年からまる1年間の短期政権でしたが総理大臣の地位にありました。国民のことなどまるで頭にない麻生、小泉、竹中を売国奴と呼ばずになんといえば良いのでしょうか。平成9年(1997年)に導入された消費税を、平成26年(2014年)8%に値上げした安倍晋三総理が、更に平成31年(2019年)10%に増税したことも、日本経済の失速の大きな原因となりました。売国奴3人組に安倍が追加されるのは必然です。デフレに増税という無能な政策に反対しない日本国民。内需でもっている日本経済なのに、国民の消費能力を奪うというこの政治的な過ちと共に、経済的には1995年のインターネット普及を境に進んだIT革命に決定的に乗り遅れ、成長エンジンを得られなかったことで国際競争力を失い続けた日本。平成の30年間に国民は雪崩を打って一億総貧困化します。平成31年5月から令和元年が始まりました。平成30年間はそっくり失われましたが、さて令和もまた同じ轍を踏むのでしょうか。
産業資本主義から独占資本主義、金融資本主義(強欲資本主義)と辿ってきた資本主義経済は、日本を除いてはとっくにデジタル資本主義の時代に突入しています。しかし日本は政界も産業界も労働界も教育界も旧態依然として未だに大きな変革の兆しが見えません。何しろパソコンに触ったことがなくUSBメモリーも知らない人間がデジタル大臣になる国です。台湾のオードリー・タンと較べたら月とスッポンです。ひろゆきやゆうすけが日本はオワコンだと絶望的になるのも宜(むべ)なるかなです