3889、(怕物歌三首)
人魂乃 佐青有<公>之 但獨 相有之雨夜<乃> 葉非左思所念
従来訓
3889、人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ
その歌意
「人」ひどい目にあわせよう。「青」と息子が仲違い。みんながみんなへそ曲がり。親父を息子が斬るのだと言い漏らしている。用心せよ。(真人をとっちめよう。めにものみせてやるのさ。青と息子がひび割れ、仲違いしてるのさ。誰も彼もみんなへそ曲がりだ。息子が親父を斬ると、しきりにほのめかしている。用心しろ。)
なんとこの歌は、大津皇子による父王(天武天皇)弑逆事件を予告する警告歌である。『日本書紀』によると、天武天皇は686年(朱鳥元年)9月病死している。しかし真相は「政争による暗殺」で、その没年はおそらく682年であろう。『日本書紀』の讖緯説的表現からそれがわかる。『書記』は朱鳥元年9月のくだりで大津皇子の謀反を記している。そして10月大津皇子は早くも死を賜る。草壁皇子への叛逆とされるが、天皇弑逆の大罪を問われたものであろう。