39 新羅はやってくる

2020年12月28日 17:35

万葉集16ー3887  作者不詳

3887、怕物歌三首
天尓有哉 神樂良能小野尓 茅草苅 々々<婆>可尓 鶉乎立毛

従来訓
3887天にあるやささらの小野に茅草刈り草刈りばかに鶉を立つも

真の歌意
お上をお前は知っているだろう。新羅らはやってくるから。伽耶の太刀太刀太刀、打ち込むからさ。山城立てても無駄さ。

 従来訓は、「天上にあるささらの小野に茅草を刈っている。その草の刈り場に鶉を飛び立たせることよ」。どういう意味?ちんぷんかんぷん。まるで分からない。
 『万葉集』は、花鳥風月や恋心をあでやかに詠みあげたもの。また、おごそかな儀式などの歌、と誤読されて来た。そのおかげで、皮肉にも無事原文のまま生き残った。『万葉集』はまさに奇跡の史料である。『万葉集』巻16は「由緒ある雑歌」。すべていわれのあるなんらかの事件と関連する歌が収録されている。
 新羅たちが日本に攻め込んでくる事態、その強大な軍事力。当時の度重なる城砦づくり。疲弊した庶民の怨嗟の声を代弁した、中大兄を批判した歌である。

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