(寄物陳思)
2799、人事乎繁跡君乎鶉鳴人之古家尓相<語>而遣都
従来訓
2799、人言を繁みと君を鶉鳴く人の古家に語らひて遣りつ
真の歌意
日の出よ。夜来るあなたは日の出に帰る。悲しい。どのように送り出せばいいのか。
従来訓は、「人の噂が高いので、あの人を他人のあばらやでこっそり会って帰した」。原文は「人事乎繁跡君乎鶉鳴人之古家尓相語而遣都」。「乎鶉鳴=オジュンメ=来てくれるので」。乎は必ず語尾につくと決めてかかると、この歌は読めなくなる。「発想の大転換」なしには、万葉集の真相は決して見えてこない。「鶉鳴」は枕詞などではなく歌文そのものである。
逆に「人事乎=ビトジオ=日の出よ」は「繁=パム=夜」にかかるレトリックであるのに、何故枕詞とされていないのか。「人事乎」を「人言を」として解いたと確信していたので、枕詞の屑籠に放り込む必要がなかった、というわけである。1078の枕詞。1078人の捨て子たちよ。何と溌剌とした魅力ある面々であることか。復活せよ、枕詞たち!
三十一文字で表す短歌。その限られた字数の中に、5文字もの言葉が、意味のない単なる節を整えるレトリックとしての枕詞であると言って、平然としている万葉学者とは一体何者か。不誠実極まりない。