113、従吉野折取蘿生松柯遣時額田王奉入歌一首
三吉野乃玉松之枝者波思吉香聞君之御言乎持而加欲波久
従来訓
113、吉野より蘿(こけ)生(む)せる松が枝(え)を折取(を)りて遣(おく)りたまへる時、額田王の奉入(たてまつ)れる歌一首
み吉野の玉松が枝ははしきかも君が御言を持ちて通はく
真の歌意
水の吉野のあなたとの争いには負けましょう。反対の意見など粉々になるかもしれません。それにしても持統皇后に頼ったせいで苦労なさいましたね。事態にヒビを入れるようなことは、くれぐれもお控えください。
「なき夫の子」との熱烈な恋に陥っていた持統皇后に対し、世論は厳しく、弓削皇子と額田王は公然と非難の歌をやり取りする。これを知った文武は、玉松の枝を額田王に送る。玉松=ゴシルソ(叛逆なさるのか)の意味を知り、額田王は2−113の歌を文武に送ったのだ。