諡号とは生前の行いを尊び、死後に贈られる称号。諡号は実に具体的に付けられている。「足(タラシ)」の名がつく天皇・皇后たちは「何処かから逃亡してきたものたちであった」とみなされる。
6代孝安 日本足彦国押人ヤマトタラシヒコクニオシヒト
12代景行 大足彦忍代別 オホタラシヒコオシロワケ
13代政務 稚足彦 ワカタラシヒコ
14代仲哀 足仲彦 タラシナカツヒコ
皇后神功 気長足姫尊 オキナガタラシヒメノミコト
34代舒明 気長足日広額 オキナダタラシヒヒロヌカ
35代皇極 天豊財重日足姫アメトヨタカライカシヒタラシヒメ
43代元正 日本根子高瑞浄足姫ヤマトネコタカミズキヨタラシヒメ
天智の双子の息子大碓と小碓(ヤマトタケルであり高市皇子)は、安閑・宣化天皇条に記されているが、安閑の前半は大碓、安閑の後半と宣化は小碓の事績という奇想天外な書き方がなされている。安閑の和風諡号は、広国押武金日天皇(ピロクニヲシタゲガネビ)で「血で領地の山鉄を裂き、蓋金=ヨン・ゲソムン=天武天皇を斬った」と読み下される。宣化の「宣」はあまねくめぐらす、「化」は姿を変えること。シマ(鉄の間)を手に入れるべく東をあまねく回った挙句、病にかかりついに死を迎えた高市。天武との親子関係から豹変、敵に姿を変えて天武を斬った高市。その一生を端的に表す和風諡号、恐るべし。