岩手県は日本の宝島だ。金、銀、銅、鉄、琥珀に至るまでお宝ひしめく国。おまけに石灰まである。これで製鉄をしない手はない。岩手県は古代から現代まで名だたるシマ、製鉄の地なのだ。お宝はまだある。岩手県花巻市出身の童話作家、詩人の宮澤賢治の作品だ。ただ「宮澤賢治風」としか言いようのないあの不思議でキラキラした魅力溢れる個性の世界はアンデルセン並みの評価を受けて然るべきである。
韓国と日本の鉄の古代史を追求しながら岩手県釜石市で取れるという「餅鉄」の存在に強く惹かれたのは数年前のことである。この地域の古代製鉄にとって砂鉄と並ぶ重要な原料であった。正式名「円礫磁鉄鉱」を何が何でも見届けなければと、伝手を頼ってついに釜石行きが実現した。釜石は1934年「日本製鉄株式会社」第一号釜石製鉄所がスタートした所であり、日本初の近代式製鉄所「大島高炉」が盛岡生まれの大島高任によって1858年12月1日に建設された記念碑的な地である。
ガマは「黒」「釜」、ウッシは「上質な鉄。」ガマウッシは「餅鉄」のことであろう。「カマイシ」に転音、「釜石」という日本式訓による漢字を当てはめたのだ。「サ(鉄)アル(粒)ガ(磨く)イシ(続ける)」の猿ケ石川(さるがいし川)。「ガ(磨ぐ)シ(鉄)」の甲子川(かっしがわ)、「サ(鉄)ビ(刀)ナイ(川または生み)」の佐比内(さひない)」「ベ(腹)コヲ(大きい)」のべご(いわて方言で牛のこと)。