120 気比神宮と桃太郎

2024年06月29日 14:23

気比神宮で桃太郎のお守りを売っている

桃太郎と関わりのある地といえばすぐに思い浮かぶのは「吉備島」こと岡山である。しかし古い歴史を持つもう一つの「桃太郎の地」はあまり知られていない。福井県敦賀市曙町の気比神宮。敦賀湾の奥まった湾岸に鎮座するこの越前国一の宮こそ桃太郎と深い繋がりのある所なのだ。主神は伊奢沙別命。大宝2年(702)勅命により社殿を造営。大宝2年は文武天皇治世時で持統が急逝した年である。この気比神宮では桃太郎の神像をプリントした護符が売っている。また現代風桃太郎人形のお守りも売られている。気比神宮では、何故桃太郎をアピールするのだろう。慶長19年(1614)再築された本殿の天井と柱の間の梁の突端には桃太郎の姿が彫刻されていた。護符の神像はその姿を模写したものだという。
 「彫刻は半肉彫り、枝付きの桃2個、葉が6枚、花2、つぼみ5である。右の桃は真ん中から二つに割れている。その中に中啓(扇子)を右手に持ち、それを胸の辺りに当て、みずら風に結髪し、端厳に衣装をつけた神が立っている。左手を曲げて肩よりも高くもたげ、左足を上げ舞踏の姿勢である。神には宝珠が飾られ口を開いている。容貌は子供ではなく老人である。左手には何か持たされていたのではないかと思われる。」(以上前田晴人著『桃太郎と邪馬台国』より引用)
 気比神宮のご祭神は伊奢沙別命の他に仲哀天皇(天武天皇)、神功皇后(持統天皇)など。伊奢沙別命は武内宿禰の夢で皇子(応神天皇=文武天皇=新羅第30代文武大王)と名前を変えてくれるように頼み、皇子が同意すると翌朝イルカが浜に打ち上げられていたというエピソードに出てくる。神域の「気比の松原」に平安時代、渤海からの施設を迎える松原客館が建てられた。

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