イザナギが鼻を洗った時、生まれた神がスサノヲで、左目を洗った時生まれた神がアマテラスだという。韓半島を一つの顔として大陸側から見ると北から南に縦断する太白山脈、小白山脈、及び韓半島第2の長河洛東江は巨大な鼻に例えられる。新羅と伽耶は古くから名だたる鉄の産地だった。スサノヲはこの鉄の産地を渡り歩いた鉄男ではなかったか。また新羅は大陸から眺めれば左側に位置する。アマテラスは新羅系であることを表すものではないか。スサノヲがソソノの息子ピリュだとすると、1世紀の出雲ですでに製鉄が行われていたことになる。日本神話の読み直しとともに、日本製鉄の始まりについて、新たな追求があって然るべきではないか。
島根県奥出雲に伝わる伝説的な鉄づくりの技法「たたら製鉄」。日本刀の素材として知られる「玉鋼」はたたら製鉄によって作られてきた。その技法は高度な技術を誇りながらも、「村下(むらげ)」と呼ばれる最高技術者の秘伝だったことから、長らく「謎の製鉄技術」としてベールに包まれてきた。「玉鋼」は現代の優れた製鉄技術でもその再現は不可能とされる。たたら製鉄の技法は、江戸時代初期にその原型が完成したと言われ、かつては日本の鉄の8割以上がこの技法によって生み出されていたという。
たたら製鉄は、大陸からタタール人によって伝えられたという製鉄技法。粘土で作った炉に砂鉄と木炭を入れて、三日三晩=一代(ひとよ)火を絶やさずに燃やし続ける作業の末にケラという鉄・鋼・銑鉄の塊を取りだす。炉は1000度以上の高熱になり、ケラは2〜4トンの大きさに成長する。ケラだけを取りだすのは不可能なので、炉ごと完全に破壊するため、遺跡としては残らない。