93 万葉集8-1419 鏡王女の吾恋」の真実

2024年05月05日 10:02

吾恋=アゴビ(息子殺し)

 天智は、白村江の戦いの戦費とその後の城造りで国費を使い果たしていた。頼りにするのは唯一鉄鋼財閥鎌足の大いなる懐だった。ところが鎌足は金を出すことを渋る。そうこうしているうちに使節についてきた鎌足の長男貞慧(実は孝徳天皇と寵妃阿倍氏の子。阿倍氏は子を孕んだまま鎌足に下賜された。)が殺された。天智は貞慧を殺すことで鎌足と張り合ったのだ。『日本書紀』にはもちろん『藤氏家伝』にも書けなかった事実が『万葉集』に残されている。『万葉集』は歴史的事件のルポルタージュであり、体制批判の偉大なコメント集である。
 万葉集8-1419鏡王女の歌の中に「吾恋」という文字がある。これは「アゴビ」と読まれているが、意味は「息子殺し」である。この文字使いにはただならぬものを感じる。天智の同母妹間人太后(間人は孝徳天皇皇后だった)との邪恋が斉明の死後、長いこと天智の即位を阻んでいた。実の妹との近親相姦で生まれた建皇子は、生まれつき口が聞けず8歳で亡くなった。その間人が665年2月急死する。またその年の12月貞慧が殺された。そして668年天智はやっと天皇即位にこぎつけた。間人はあまりにもタイミングよく死んでくれたことになる。貞慧同様、間人も天智に殺された可能性が高い。しかし天智と鏡王女との間に生まれた双子の娘たち(元明天皇と元正天皇)は父天智は即位できなかったと証言している。天智の天皇即位は正式のものではなかったのだろう。

記事一覧を見る