85 漢字の音を借りて外来語を表すということ

2024年04月23日 18:13

莫大小=メリヤス

 7、8世紀の日本で、古代韓国語を「日本式読み方の音訓から生じる音声を借りて」書き表していたように、近代日本に押し寄せた外来語を日本式漢字の音訓から生じる音声を借りて書き表したもの、例えば「莫大小」という言葉がある。ある万葉集に「莫大小」という語が出て来たとする。歌の作者はあくまでメリヤスのことを表記したのだが、後代の学者は何を表すものか全くわからず、これを漢文風に「大小とするなかれ」などと読んでしまい、これで歌意は完全に支離滅裂となり、フワフワ、モヤモヤのお化けのような読み下しが出現することになる。
 メリヤスは伸縮性がある。大きい人にも小さい人にもサイズは合う。それで「大きい小さいと心配する莫れ」の意まで含めて「莫大小」という類似音である漢字を選んだというのが事の真相なのだが、学者先生方はそうは考えない。莫大小がメリヤスなんてこじつけも甚だしい。なるほど莫はメと読めるし、小もスと読んで無理はないだろう。でも大はどうだ。どう見てもヤスとは読めないではないかと、正しく読んだ者に対してカンカンにお怒りになるわけだ。
 有名な持統天皇作「春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」(『新古今集』)。原文は「春過而夏来良之白妙能衣乾有天之香来山」。万葉集では、この歌は「春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山」になっている。夏が来たらしい、ではあまりにも季節の到来についてばんやりしているから不都合だと変えたのか。「天之香来山」と書いているのに 勝手に固有名詞「香具山」に変えている。「干したり」は「干している」の意だが、原歌が歌われた頃はちゃんと干していたのだろうが藤原定家の時代には、もう行われていなかったのだろうと後世の学者はこれまた勝手に解釈している。
 真の読み下し 春過而(ポムジナイヌ)夏来良之(ヲルムオルランガ)
        白妙能(サロダベヌン)衣乾有(ゴロルブシアジ)
        天香具山(アビヒャゴンメ)
 真の歌意   春が過ぎて夏がやってくるのだろうか
        白い肌着の衣の紐をほどく貴方から(いつになく強い)
        香りが漂います
 香りが(漂って)来る。まさにその通り=マジャヨ・マジャマジャ。この「明らかだ、はっきりと」の意の韓国語マジャマジャが日本語「まざまざと」の語源。現代も使われている韓国語だ。香具山に衣を干す⁉️衣を干すのは軒下ではないのか。それを疑いもせず、正しい解釈を提起する者を頭から否定し、弾圧する学者先生方とは一体何者か。世界に冠たる、古代日本の稀代のルポルタージュ『万葉集』に対するリスペクトがない。

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